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今まで私が関わった卒論の紹介
2007 年度
- 井口美咲 副助詞ダケの相応の用法
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- [ひとこと]
- ダケの意味としては、「〜のみ、〜に限って」という限定の用法が注目されることが多いですが、この論文では、「有名なホテルだけに、...」といった、いわゆる「相応の用法」に注目し、「有名なホテルだけに」という表現と「有名なホテルだけあって」という表現の違いを考察しています。微妙な違いなので、理解が進めば進むほど、どのようにまとめればいいか悩んだと思いますが、最後まで投げ出さずに粘ってくれました。
- 島本明子 会話中にあらわれる文末詞シ
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- [ひとこと]
- この論文で注目しているのは、A: 「私ってかわいくないよね…」 B: 「かわいいし!」のような、実際に友人たちの間でかわされている会話内での「〜し!」の用法です。いったいどのような場合に、このような「〜し!」が使えるのかを考察し、「マイナスの感情の出どころ」という観点から分類してまとめてくれました。文末詞の用法には、いろいろな側面があって分析が難しいですが、今後の布石になるだろうと思います。
- 高橋百華 上昇調のイントネーションで発話される否定疑問文の意味機能
- 要旨 (HTML)
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- [ひとこと]
- 「〜ない?」「〜んじゃない?」という文は、形式的には否定疑問文ですが、用法としては、何らかの命題の否定の真偽を尋ねているとは限らず、この論文で提案されているように、「話し手自身の意見を述べる」こともあります。ここでは、特に平板型のイントネーションで発話された場合に注目し、この用法で観察される様々な制限について分析しています。特に、「〜ない?」は原則的に「直接体験」にもとづく意見であり、その点で「〜んじゃない?」と異なるという指摘が興味深いと思いました。
- 長野彰子 「〜かわりに」の意味と用法
- 要旨 (HTML)
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- [ひとこと]
- 「かわりに」という表現は、「[手を洗う] かわりに [足を洗う]」のように、片方を放棄するかわりに他方を成り立たせる場合もあれば、「この街は [静かで落ち着いている] かわりに [交通の便がやや悪い]」のように、両方が成り立っている場合もあります。不思議なのは、それほど大きな意味の違いがあるということを普段あまり意識すらしていないということです。当初、私は、もっとこの2つの用法の違いがはっきりしているだろうと思っていたのですが、結果的には、文脈によってどちらの解釈も可能な文が非常に多いという事実に驚かされました。この論文では、いろいろな例文を考察して、どのような条件が満たされていると、どちらの解釈になる傾向が強いのかということが、たいへんすっきりとまとめられています。
2006 年度
- 白石卓也 カモシレナイとノカモシレナイ
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- [ひとこと]
- 「明日は雨が降るダロウ/カモシレナイ」という文は気象予報士が言ってもおかしくない文であるのに対して「明日は雨が降るノダロウ/ノカモシレナイ」だとおかしい、という出発点の観察がとても興味深い指摘でした。「ノダ」の意味と用法については、すでにいろいろな研究があり、新しい発見をのぞむのは難しいテーマでしたが、自分なりに考察を深めてくれました。
高畑晶子 形容詞の名詞化接尾辞-sa、-miの意味と分布
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- 「面白さ」と「面白み」のように、「〜さ」「〜み」はどちらも形容詞を名詞にする働きがありますが、この2つにどのような違いがあるのかというテーマに取り組んだ研究です。「〜み」の例がかなり限られているために一般化に苦労したようですが、大量の例文と格闘した結果、「〜さ」「〜み」の基本的意味をそれぞれ2つずつあげ、それらの選択に関わる条件を導き出しました。
徳田涼子 接続助詞ツツとナガラについて
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- [ひとこと]
- 「母は電話をしながら(その場にいない相手に向かって)お辞儀をする」とは言えるのに、「母は電話をしつつお辞儀をする」と言うとなぜ奇妙なのか、というのが、この研究の発端でした。通常、ツツもナガラも動作の並行を表す接続助詞とされていますが、その細かい違いについて考察を加えている論文です。
冨田起世 複合動詞V‐カケルとV‐カカルの意味と形式
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- [ひとこと]
- 「火が消えかけている」と「火が消えかかっている」は、ほとんど同じ意味のように思われますが、その微妙な意味の違いに切り込んだ論文です。使われている例文の状況設定が巧みなので、著者の意図がとてもわかりやすく提示されています。また、著者の提案する一般化に沿わない例もあるのですが、それらがなぜ反例に見えるふるまいをするのかということも説得的に述べられており、感心しました。
中川麻衣子 「NのN」の意味と修飾関係 ―「偽物のルビー」と「ルビーの偽物」―
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- [ひとこと]
- fake という英語の形容詞の意味の記述が一筋縄でいかないということは Higginbotham (1985) で知っていましたが、そのような意味が日本語では「偽者のルビー」とも「ルビーの偽者」とも表現できるということは(私にとって)盲点でした。本論文では、他のいろいろな表現も使って、語順の違いによってもたらされる意味の違いを観察し、「の」による修飾の意味機能にまで踏み込んでいます。本論文では、形式意味論の枠組みはとられていませんが、内容的にはかなりのところまで来ているので、ここでの観察に基づいて本格的な形式意味論の議論に持っていくことは難しくないだろうと思います。
永嶋いづみ 非難の文脈と逆接助詞
- 要旨 (HTML)
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- [ひとこと]
- 日本語には、逆接の関係を表すと言われている接続助詞がいろいろありますが、その中には「〜くせに〜」のように、文全体が非難をする文脈でしか使われないものがあったり、逆に、非難の文脈では使いづらいものがあったりするということを明らかにしました。例文の作り方が上手なので、問題にしている対立がわかりやすく、例文を読むだけでも楽しませてもらいました。論文の構成について、何度か大掛かりな組み換えを指示したのですが、その都度、あっという間に全体を適切に書き換えてきてくれて、舌を巻きました。
割鞘優子 今ノトコロの解釈と意味機能
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- [ひとこと]
- 田窪・笹栗 (2002) のトコロの分析をベースとして、「今のところ」という表現の意味機能を考察した論文です。枠組みの理解から、いろいろな例の観察に基づく一般化、そしてその反例に見えるものについての考察、とほとんどすべての手順を、教員の助けを借りることなく、自力で完成形に持ってきました。先行文献の中で示唆されていることを "再発見" してしまっている部分も含まれているかもしれませんが、全体を自分できっちり理解して構成したことは高く評価したいと思っています。
2005 年度
- 安藤宏 日本語の形容詞連用形の名詞的用法について
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- 「遠くを見た」のように、形容詞の連用形に直接格助詞が後続する用法について観察し、Larson & Yamakido (2001) "A New Form of Nominal Ellipsis in Japanese" (J/K 11) で提案されている分析に対する問題点をあげたものです。興味深い観察がいくつかあげられており、このような積み重ねをしていくことによって、将来的に代案の提案にも結びつくのではないかと思わせてくれます。
亀川裕子 複合動詞「V-スギル」の特性について
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- 日本語には「早く着きすぎた」という表現がありますが、英語なら「arrived too early」と言うことを考えてみてもわかるように、実はこれは「着くのが早すぎた」という意味です。ところが、だからといって「死ぬのが早すぎた」という場合に「早く死にすぎた」と表現することはできません。この論文は、その違いがどこに起因するかという問題に取り組んだものです。随所に鋭い洞察力が見られ、興味深い論文になりました。形容詞の本格的な意味論にも刺激を与えうるものだと思います。
須川友美 日本語の程度をあらわす助詞について 〜ホド、クライの意味と用法〜
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- 「彼女{ほど/くらい}頭のいい子はいない」という場合には、ホドとクライにあまり意味の違いがないように思えますが、「あれくらいの美人」と「あれほどの美人」だと、ニュアンスの違いがかなりはっきりしてきます。ホドとクライの意味の違いについて、いろいろな例文をあげて考察した論文です。
鈴木さやか 複合助詞マデモの意味と用法 −マデモナイとナイマデモに着目して−
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- 「〜するマデモナイ」という表現と「〜しナイマデモ...」という表現は、どちらも「マデ」「モ」「ナイ」という語彙の組み合わせであるにもかかわらず、語順が違うと意味・用法が大きく異なります。その違いに注目して大胆な分析案を提案した論文です。分析そのものについては、いろいろ意見がありうると思いますが、ここで指摘されている現象は、「ナイ」のスコープという観点からも興味深いものだと思います。
宮本茂治 人称代名詞の役割をはたす普通名詞について
2004 年度
- 片岡大輔 日本語における指示詞「コレ」の用法について ―法律文を中心に―
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- 「〜は、これを…とする」というような、法律文に特徴的な構文に注目して、「これ」の用法を考察した論文です。旧刑法と現刑法は、内容はほぼ同じで文体だけが書き換えられているので、用法の頻度等を比較する材料として興味深いと思います。この「これ」の用法は、「〜は」の用法とも関連しているため、一筋縄ではいかない面がありますが、地道に資料を調べた点で意義のある研究になっていると思います。
熊丸令 日本語の不定語・重ね不定語の特性と分析
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- 「太郎は、誰々が来ると発表した」のような「誰々・何々・いついつ」等の語の用法を調べた力作です。これまで、日本語の不定語としては、「誰・何・いつ」「誰か・何か・いつか」「誰も・何も・いつも」等の表現がもっぱら扱われてきましたが、不定語の全体像をつかむためには、ここで分析されている「誰々・何々・いついつ」等の "重ね不定語" も視野に入れるべきだと思います。どのような場合に重ね不定語が容認されるのか、その条件が少し複雑ですが、ここで取り組まれているように埋め込み文の意味タイプに注目することが不可欠でしょう。この研究そのものは記述的なものですが、理論的な統語論に寄与する可能性が高いものだと思います。
田中千恵 日本語の助動詞「ハズダ」とその否定について
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- [ひとこと]
- 「ハズガナイ」と「ハズデハナイ」の違いをいろいろな側面から浮き彫りにした研究です。状況設定がたくみで、わかりやすい例文が多数あげられています。否定と呼応する要素(シカ・ケッシテ等)との関連や、コソアとの関連など、分析として説明しきれなかった側面にも、興味深い指摘が多数含まれています。
田中英恵 日本語の形式名詞の意味と用法―「うち」と「なか」の類似性と相違点―
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- [ひとこと]
- 「雨が降っているうちに」「雨が降っている中で」など、形式名詞として使われる場合の「うち」と「なか」の用法を比較し、整理した論文です。例文が工夫されており、どのような要因が関わっているかがわかりやすく提示されています。この種の研究では、初めに注目した用法に偏った記述になりがちなものですが、広くいろいろな例文が考察されています。
松田明子 肯定・否定表現における日本語程度副詞について〜「とても」「なかなか」「まったく」それぞれの差異に注目して〜
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- [ひとこと]
- 「とても」「なかなか」「まったく」が、どれも否定呼応表現として使われることは、よく知られていますが、肯定表現として使われる場合の意味の記述は、それほど十分になされてきていないと思います。どのような概念を用いて説明するかについては、いろいろな意見があるところかもしれませんが、「なかなかだね」「まったくだ」など、副詞だけで成り立つ文の意味に注目したところが面白いと思いました。
2003 年度
- 為頼梨絵 形式副詞ホドの非常の用法について
- 要旨 (HTML)
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- [ひとこと]
- 「死ぬほど驚いた」のような「ほど」の用法についての考察です。随所にみずみずしい言語感覚がうかがえ、好評を博しました。ここまでくると、さらに「なぜ?」という問いを追究してほしくなりますが、その課題は、機会があれば後輩が引き継いでくれることでしょう。
増山由梨佳 心理動詞を含む文の特異性とその構造
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- 全文 (pdf)
- [ひとこと]
- 日本語では、どのようなものが psych-predicate と呼ばれるにふさわしいのか、そして、構造的にどのような特異性があるのかを調べようとしたものです。生成文法では、英語やイタリア語の psych-predicate の研究がよく知られていますが、その結果を借用して話を進めるだけでなく、日本語のどの述語にどのような特性があるのか、地道な研究の積み重ねが必要だと考えています。専門的に見れば、個々のテスト文の作り方など、見直していかなければならない点はいろいろありますが、たたき台としての役割は果たしてくれていると思います。
2002 年度
- 山田明子 日本語におけるシタとシテイルの違いについて
- [ひとこと]
- むずかしいアスペクト論ですが、工藤真由美(1995)『アスペクト・テンス体系とテクスト―現代日本語の時間の表現―』などをよく読み込み、問題点を指摘しました。私が九大に赴任した初年度だったため、卒論生にどこまで要求してよいものか見当がつかず、少し及び腰の指導になってしまいましたが、自力でよくがんばってくれました。
吉見雄希 形容詞を作る接尾辞「ぽい」について
- [ひとこと]
- 「男っぽい」「怒りっぽい」など、従来からある「ぽい」の用法に加えて、近年の口語によく見られる「とうとう買ってくれるっぽい」などの用法を南不二男の階層構造の観点から考察したものです。就職活動等で、卒論にとりかかる時期が比較的遅く、少々心配しましたが、最後の追い込みの集中力には感心させられました。
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